kaizeの部屋

ツイッターからはみ出た日記

イッセイミヤケの話

先日、デザイナーの三宅一生さんが亡くなられたというニュースがありました。

今の若い人はあまり知らない人が多いのかもしれませんが、俺よりも一世代前の人たちには非常に有名で、ファッションを志す人にとっては必ず名前を聞くデザイナーだったと思います。

 

私がファッションを志した時にはDC ブームも去り、どちらかと言うとコムデギャルソンやヨウジヤマモトの方がメジャーで、言い方が悪いかもしれませんが少し年配の方が好むブランドという認識はありました。

余談ですが、ファッション専門学校の講師などはイッセイのプリーツをよく着ていた記憶があります。

俺がイッセイミヤケを意識したのは就職してからかなぁ。それまでもプリーツは買ったことあるし(あまり着なかったが)一枚の布に影響されて服を作ったこともありました。が、深く自分の方向性に影響はされてなかったんだよなぁ。

 

で、就職してから何ですが、よく聞くんですよ。名前を。イッセイさんが使ってる生地、工場、加工など。逆にギャルソンの話は縫製工場が縫ってる程度の話を聞く程度でイメージとしてはイッセイさんの服っていろんなところで作ってるんだなって印象でした。

今思えばプランテーションなどの百貨店ブランドも含めての情報だったかもしれませんが。

(工場の人たちって、ブランド名よりも会社の名前で言いますよね。まぁ対会社で商売してるからねぇ。だからブランドはなんですか?って聞いても「なんだっけ?」みたいになることが多い)

 

ちなみについ数年前ですが、ある染色工場に行ったときに「ここから先はイッセイさんの加工をしてるので見せられません」って言われました。なんか特殊というのもあるのでしょうが、そこはやはり世界的なブランド。情報は漏らせないのでしょう。そんなこと言われると逆に見たくなるわ!って思いましたがまぁ、諦めました。見たところで真似できないですしね。

 

服が売れてた時代というのもあるのですが、弊社も昔は生地を作ってデザインしてました。デザイナーがこんな生地があったら面白いのではないか、この加工なら新しさを表現できるのではないか。毎日そういうことを考えながら研究と開発をやってました。

多分、他のアパレルも同じことをやっていたし、生地屋や加工場、工場も「デザイナーならきっと新しいものができるし、たくさん売ってくれる」と信じてトライアンドエラーを繰り返しながら無理難題についてきてくれていたと思います。

「面白くて新しいものを作れればたくさん売ります」という土台の上にアパレルと工場の関係が成り立っていたのですね。

 

時代が変わったのか、わかりませんが次第に苦労して作った”新しくて面白いもの”が売れなくなり、けど、いつかまたあの頃のように良いものが出来れば売ってくれると信じてやっていたのですが、とうとう工場も加工場も染工場も耐えられなくなり廃業していき、残った人たちはもっと効率的に作らないとやっていけないという考えに変わっていったと思います。

俺も少なからず、売れた時代が終わっても、こだわった素材や加工を作り続けていた機屋や染工場が倒産していくのを見てきましたからね…

それからは、今のデザイナーをディスってるわけじゃないですが、生地は作るものから選ぶもの、買うものに変わっていきました。だから生地を作った経験がある人なんて少なくなってるし、糸を作るなんてことを恒常的にやってる人はもっと少ないと思います。やれても別注ジャカードとか別注プリント、別注色くらいかな。

 

けど、そのイッセイミヤケはそれを今でもやり続け、ビジネスとして成り立たせてきたブランドだと思います。今でも俺から見ても、こんなのやれる加工場がまだ日本にあるんだと思うようなことをやってますしね。

 

まぁ俺はイッセイ出身でもなんでもないので中身のことはわかりませんが、面白いけど面倒で生産性も低いことも結構やる一方でプリーツやバオバオなどの売れ筋もしっかりと作ってるところがイッセイミヤケの真の実力で、ぶっちゃけ加工や素材だけならこだわってたアパレルはたくさんあったと思いますが、生き残って今だに250億近くの売上高を誇ってるのはビジネス的にも賢かったと言わざるを得ないかなぁと。

 

とはいえ、イッセイの別会社のエイネットは主力のデザイナーが抜けたり社長の交代もあり混乱してるように見えますね。今はプランテーションとズッカのみになったのかな?以前はツモリチサトやメルシーボークーなどのブランドもありましたが、最後はあんまりいい噂は聞かなかったですね。

 

話は変わりますがイッセイ出身のデザイナーって結構いて、個人的にはソマルタの廣川氏やマメクロゴウチの黒河内氏、CFCLの高橋氏などはこれからの活躍に期待できると思います(偉そうに言ってますが、すみません)

その3人はイッセイミヤケのフィロソフィーを体現してるんじゃないかと。表現が端的でわかりやすくかつ量産に耐えうるデザインというのは、言うのは簡単ですがなかなか難しい。先ほど言った技術や手間をかけたデザインも難しいっちゃ難しいのですが、ソマルタの特殊なラッセル編み機を使用したスキンシリーズ、マメの独特な感性からなる曲線と刺繍、CFCLのリサイクルポリエステルの付加価値を高めたホールガーメントなど、服と感性を両立させ、ブランドの軸をしっかり持つことでビジネスに繋げるという強い意志を感じます。ほんと偉そうに言って申し訳ないが、そう思うと”デザイナー”を育てる会社なんだなって思います。

当然、会社は育ててるというだけでなく、優秀な人たちが集まってくるのも大きいかと思うのですが、先ほど言ったように、今でも自分達のオリジナリティを表現する土壌があり、それに応える工場を有しているということが、デザイナーにとって非常に勉強になるし、その後その土壌、文化を受け継いでいけるのだろうなと思います。

 

三宅一生さんは亡くなってしまったけれども、会社はまだ続くと思いますし、今のウィメンズ、メンズのデザイナーも優秀ですよね。特にメンズは最近は若い子にも人気みたいですしね。(俺が若い頃は人気なかったけどな)そして、その意志は少なからず次世代に繋がっていると俺は感じてます。

 

それでは😌