妻はモノを捨てることが苦手で、俺は結構スパスパ捨ててしまう。
かれこれ妻とは長い間一緒にいてこれといった喧嘩もしたことがないのだが、唯一険悪になる時はモノを捨てるか捨てないかの話になる時だ。
収納場所には限りがあるし、特に服なんかはずっと着てないものをとっておくのは場所の無駄というのは彼女も理解はしているらしく、数年に一回、夫婦で着ない服を捨てることにしている。
前述のとおり俺は比較的決断が速く、サクッと捨てるものを決めていくのだが、妻は何日もかかるし、結局完遂しないまま終わることも多い。
横から俺が「これは流石に着ないでしょう?」と言うと妻は「これは叔母さんから譲り受けた大事なもの」とか「これはお母さんが似合うって言ってくれたから」「これは着ないけど気に入ってる」など様々な理由で簡単に捨てることは出来ない。とにかく捨てるということに強いストレスがかかっているようだ。
服そのものには無頓着な妻ではあるが、モノとそれにまつわる思い出を大事にする人間だと思う。
彼女にとっては服はただの服ではなく人との繋がりの記憶みたいなものなんかなって思う。
俺も人生の折り返し地点をとうに過ぎ、過去を思い返したり昔の写真を見返すことが増えた。
生まれたばかりの娘を抱いてる写真、ウールのブルゾン着てるな。ほんとよく着てた。
娘が乗ったブランコを押してる写真、ピンクのストライプのコットンシルクのシャツ。洗いすぎて破れたんだった。
七五三の写真、ブラックのスーツ。かなり高い買い物だったが形が古くなったから着なくなったな。
福岡から大阪に引っ越す時の写真、好きなブランドのウールトップス。着ようと思って探したけどいつのまにかなくなってた。
きっと全部捨ててしまった。
破れたり、似合わなくなったり体型が合わなくなったものもある。捨てたのは仕方がない。
でもやっぱり服というのは記憶の中の出来事を思い出せるモノなんだなって捨てたことを後悔しました。
歳をとったからかもしれないし、もしかしたら妻に似てきたのかもしれない。
それこそ服を作る仕事しているから、その人の人生で思い出に残る服を作れれば本望だなって思いました。
それでは