kaizeの部屋

ツイッターからはみ出た日記

ドリスの話

2023SSのコレクションもほぼ終わりまして、個人的には楽しみな1ヶ月が終わったなぁと。
仕事とはあまり関係なく、ファッションの祭典であるパリコレはじめヨーロッパのコレクションを毎回楽しみにしています。

 

仕事として見る場合改めて一度見直したりもするのですが、こういうので大事にしてるのは空気感と言いますか全体の流れを自分の意識と擦り合わせたりすることなのですが、まぁ単純に美しいものを見るのが好きなだけなので趣味なのかなぁと。

ちなみに、たまにどこのブランドが好きですか?と聞かれたりもするのですが、その時はとりあえずドリスヴァンノッテンとよく答えます。自分がとりわけよく着るブランドというわけではないのですが、昔からなんか好きなんですよね。

ということで、俺とドリスの出会い(本人には見たこともあったことも無いですが)の昔話でも。


かれこれ20数年前、高校卒業したら服飾のデザイン専門学校に行きたかったが、親の反対で大学に行かなくてはいけなかった話は書いたんですが、地元の大学に合格した時に親は大変喜びまして(大学に行けば服のことなんて忘れて普通に就職してくれるだろうと思ってたみたい)、「お祝いに好きな服を買ってあげよう」という話になりました。

その当時、服は好きではあったものの地元のセレクトショップで国産のブランドを買ったりする程度で、ブランドものといえば少し遠出してアニエスべーとかポールスミスとかAPCとかそういう服をお小遣いを貯めてよく買ってました(とは言え、高いんでちょっとづつしか買えなかったけど)

俺は好きな服を買ってくれるということで、ここぞとばかりに地元で一番いい服を売っているセレクトショップに親を連れて行き、買ってもらったんです。ドリスヴァンノッテンのジャケットを。その当時まだそんなに高くなかったので多分、5〜6万くらいだったんじゃ無いかな?買ってもらったから知らんけど。

それはシェトランドっぽい荒く織ったウールで薄いイエローっぽいベージュにブラウンのウインドウペーンの裏無しパッドなしのアンコンジャケットでした。メンズでそんな素材のそんな柄ってあんまりなかったのか、着てたら「寅さんかな?」とよくイジられたり、知らんおばさんに「あなた手作り?いいわね」みたいに言われたり、なんにしろ田舎だったので、イエローのジャケットなんか着てたら浮いてたのかもしれませんが「服で声かけられるもんなんだな」とも思いました。

いくら、アニエスべーのポプリンシャツを着ようが、APCのデニムをはいてようが、その当時流行ってたハイテク系スニーカーを履いてようが、知らん人に声を掛けられることなんてなかったので、なんとなくドリスヴァンノッテンすげぇと10代ながらに思ったわけですよ。

とはいえ、ドリスなんてその当時でも全然買えなくて、その一張羅の寅さんジャケットをひたすら着ていたのですが、大学に入ってから学費も稼がないといけなかったのですが、バイトをしてドリス貯金(というか服貯金)をしてちょくちょくドリスを買えるようになりました。まぁほとんどセールで買ってましたけどね・・・

やっぱね、デザインもさることながら生地が違うんですよ。ドリスといえばプリントというイメージもありますが、俺はどちらかというと素材の良さと色使いの巧みさのイメージが強い。いろんなブランドモノを買いましたが、生地と色に関しては圧倒的に好きだった。その当時のメンズってブランド物でもいろいろありまして、コムデギャルソンやヨウジヤマモト、インポートだとクリストフルメールとかジョゼレヴィとかジョーケイスリーヘイフォードとか。その辺が人気だったとは思いますが(マルジェラはまだそんなに出回ってなかった気がします)なんかごちゃごちゃしてなくて大人っぽいというか。生地もなんか味があって色味も黒や白や紺とかじゃなく微妙な色味のベージュやグレーだったり、明るい色目でもどことなく上品で好みに合ってました。

まぁ今考えると、相当地味で10代20代とは思えないおじさんみたいな格好をしてたなぁとは思います。おばさまからのウケは良かったですけどね...

ちなみに、ドリスの服はコピーして作ってました。大学の後半から近所の洋裁教室に通ってたんすよね。そんで俺の数少ないドリスのジャケットの寸法を抜いて型紙にしてました。当然先生に教えてもらいながらですけど。なんかその時に「あぁーこうなってんだー」みたいに思うことは多かったですね。いきなりドリスの型紙抜くってどうかと思いますが、まぁ若気の至りかな。

けどね、パターン抜いたとしても生地が全然違うし、縫いも下手なんで一応着れるには着れたんですが、結局2着ほど作ってほとんど着なかったかな。やっぱ素人の手作りは手作りなんだなと。けど、ドリスをさらに好きになるきっかけだったかなと思います。

こないだ就職する時にはメンズにテーラーに弟子入りしたいと思ったみたいなこと書きましたが、実は企業の説明会なんぞも聞きに行ったりして、その当時ドリスを扱っていたライカ(今はない)にも就職説明会にもドリス着て行きました。そして「ドリスヴァンノッテンが好きで説明会に来ました」って言ったら「あぁ、ドリスは別会社みたいな感じなのでほぼ関わりないっすよ」とか言われてガッカリして帰ってきた記憶があります。世間知らずだったんですね...

そんでもって色々あって専門学校卒業して、普通のアパレル会社に就職し晴れて服をバンバン買えるぞ!となったのですが、人生そんなに甘くはなくめちゃくちゃ薄給なもんでドリスなんてホイホイ買えないのですよ。

それでも服を買えないからストール(ドリスのアフガンストールが流行ってたんすよ)なんかを買ったり、スーツやジャケットもローン組んで買った記憶が。

てか、途中でアンドゥムルメルテールに浮気したり、コスチュームナショナルに浮気したりと服自体はなんとか買ってたのですが、ドリスだけを買うという感じにはならなかったんですよね。シーズンによって好みってのもあったとは思いますけどね。

フランスに旅行に行った時にもドリスのお店に行きました。ベルギーまではいけなかったのですが。なんかね、若造が入る場所ではなかった(当時20代)地元のマダムが数人いて、なんかすぐ出ちゃった。まぁ高級ブランドなんでやっぱ場違いだったな。けど、いい思い出。


これまで色々な服を買ってたものの、よくよく考えるとドリスの服あんまもってないなと...あんなに好きなのにほとんど買えてない。高いってのもあるけど、なんだろうな。気合いが足りなかったのかな。

でも、でもですね。好きなブランドは?って聞かれたらやっぱドリスヴァンノッテンなんですよね…着る機会はオーラリーとかマーガレットハウエルとかの方が多いですけど、それとこれとは違うんですよ。

本当にドリスの服からいろんなものを学んだと思います。生地とはこういうもの、色とはこういうもの。デザインとは。など。だってさぁドリスのシャツの襟の形やジャケットのラペル見たらドリスってわかるし、生地も触ると「あぁそうそう、こういうのですよね」ってなりますもん。そういうところがデザインの個性なんだなぁとか思いますし、勉強にもなります。

という俺とドリスの薄いお話でした。

 

追加

ドリスがブランドのデザイナーを退任するという情報があってちょいショックを受けております。しかしながら、もう65歳?ついにこの時が来たかという思いでおります。

5年ほど前までインディペンデンなブランドとしてモードの第一線として活躍したブランドとしては稀に見る存在だったんじゃ無いかな。

情報では全く関わらないわけでは無いとのことですが…

ともかくアントワープシスで最も成功したデザイナーというのもありますが、まずは商品がこの上なく素晴らしかったと思います。

まだ2025年のメンズコレクションが残ってるのですが(ウィメンズまで見たかったな)これまでお疲れ様でしたと言いたい。後任は決まってないようですが、また新しいドリスヴァンノッテンが見られるのも楽しみにしています。



それでは