kaizeの部屋

ツイッターからはみ出た日記

ポケットの話

こないだ、ツイッターで話題になっていたポケットの話。

 

ユニクロの感動ジャケットに胸ポケットと内ポケットがついてたら夏用に絶対買ったのに、端折られてたから女性をバカにしてるんだと思う 男性の感動ジャケットにはついてて、同じ値段の女性の感動ジャケットについてないなんておかしいでしょ 感動ジャケット楽しみにしてたのに残念”

 

このツイートを発端に、女性の服にはポケットが付けられていない服が多いという意見が多数見られ話題になったんですね。

ちょっとね、これは誤解を招く表現かもしれないが、俺はあまりポケットに重要性を感じていないんですよね。

 

もちろん、あった方が便利だし、付けれるデザインにはつけるんですが、これは俺の育った環境が影響してるのかなと。

 

実はこの業界に入った頃、ポケットに関してはかなり疑問があったんですよ。

「何でうちの服はポケットをつけないんだろう?」って。

例えば、ジャケット作るにも胸ポケットはもちろん、内ポケットも付いてない。前見頃のフラップポケットも袋布が小さいし「これ何を入れるんですか?」って何回も聞いたことがあります。

「女性は男みたいにポケット使わないから」とその当時のチーフによく言われてました。

俺は男ですから、特にジャケットなんかを作るときは「内ポケットは絶対いるでしょう?絶対必要だよ!」と一人で言い張ってましたが、誰も賛同してくれませんでした。

 

それでも俺があまりにも内ポケットつけたいっていうもんだから、一度付けてもらったことはあったんですが、結局、俺の記憶では付けようが付けまいが売れ行きは変わらず、営業からも「この商品はポケットが付いていたから売れました」みたいな報告はなかったと思います。

その時に思ったんですよ。「弊社の「顧客の女性はポケット使わないんだと。ポケットをつけたいというのは顧客のニーズを掴んでない俺のエゴなんじゃないか」と。

 

その件だけじゃないですが、色々な経験があって、婦人服のデザインをするということは、着心地が良く、そして女性を美しく見せるということが優先事項なんじゃないかという考えに変わっていったと思います。(決して機能性を蔑ろにしているということではなく、婦人服としての機能性の優先順位は弊社ブランドではポケットではなかったということかな)

その時はどちらかというと高級なエレガンスカジュアルのブランドにおりましたので、ブランドのポケットに対する考え方、そして美しく且つ着心地良くというのは当然だったと思います。

 

それから10年ほど経ってカジュアルが得意なブランドに異動したのですが、そこからはポケットに関しては前のブランドとは違って、付けた方がよりベターという評価をされるようになったんですよね。

最初のブランドにいたのは20年くらい前と考えると時代性もあったのかもしれません。

何にしても、今はポケット付けてと良く言われます。

特に俺が言われるのがワンピースですね。カジュアルなんでフィットしたデザインは少なく脇シームポケットをつけるのは容易です。試着モデルにもポケットの深さ、付ける高さが適切かよく聞いてます。

店頭の感覚だと、あったら嬉しい、無ければあった方がいいのにと言われる程度はあるのですが、とりあえず、あったほうが売りやすいとのこと。弊社ブランド(国産の場合)では付けると2〜3千円上代は上がりますが、付けれるデザインには付けてます。

 

しかしですね、俺はエレガンス(寄り)でキャリアをスタートしてますからそのブランドの特徴や哲学みたいなのが染み付いてて、基本的に無理にポケット要らなくね?という派になってしまっているのも事実。

例えば、ズボンの後ろポケット。飾りの玉縁がついてる場合もありますが、それはどちらかというと反対。付けるなら付ける、付けないなら付けないという考えなんですが、極端にいうとヒップポケットいらないでしょう?という考え方です。

デザイナーによっては、目の錯覚で付けた方がお尻が上がって見えたり、小さく見えるとかいう人もいますが、個人的にはお尻を美しく見せるのは、デザインと素材とパターンでどうにかしようよ。と言った具合に思ってる次第。

ズボンの脇ポケットは必要だと思いますが、ピッタリしたシルエットのものは不要と考えます。袋布大きくしたところでスマホでも入れてると型が出ちゃうし美しくないでしょ?みたいな。

全然関係ない話ですが、俺は物をよく無くすんですけど、その原因はポケットなんですよ。

メンズのポケットは深くて大きいですよ。けど、入れると無くすんですよ。自転車漕いでると落とすんですよ。マジで。だからやっぱね。ポケットに入れるのはメンズでもハンカチくらいが妥当だと思うんですけどね。

 

なんか、しょうもない話をしていますが、何が言いたいかというと、カジュアルな服にはポケットがあってもいいでしょうし、体にフィットしてない服なら付けれるものには付けてもいいと思います。けど、ポケットが付いてる付いていないだけの判断は反対なんですよ。

 

穿った見方をすれば、「この服はポケット付いていないから女性のことを考えてないブランドだ」という決めつけをしたり、「男性服よりもコストをケチってるんだ」と思い込んだりするのが腹立たしいのですよ。

そもそも服は男性と女性を比較するものではなく、それぞれの差を楽しむところに良さがあるんじゃないかなって思ってて、男性服がこうだから差別だとかそういうのはちょっとなぁ。

何かと比較して問題提起するのは俺は苦手かな。普通に「この上着スマホ入れられるポケットあると便利だと思います」と言えばいいじゃん?みたいな。

 

ちなみに俺はエレガンスを感じる余所行きの服が大好きなので、バッグも含めて小物など全体のスタイルを大事にしたいタイプです。時代に逆行しているのかもしれませんが、女性らしい凛として、それでいて華やかなスタイルが好きです。フェミニンにもマスキュリンにも振れるスタイリング。ドレープで揺れる生地、丸みや直線が自由自在のシルエット。そして上質で知性を感じるバッグやヒールやアクサセリーでスタイリングできるって、男には出来ませんので、俺からすると羨ましいんですけどね。

 

今も昔も人間というのは好みがあって特に日本では欧米のような人種差別や封建制度の名残や、同調圧力も少なく多様性を謳歌できる国だと(完璧とは言い難いかもしれませんが)思うし、こんなに服のバリエーションが至る所で売ってある国はないと思います。それだけ多様性を許容し対応できる土壌なんだと思うんですよ。

つまり、好きなように選べばいいんじゃないですかね(結局それかい)

 

最後にビジネス的観点から。

どこかのコメントでもありましたが「ポケットをつけて売れるならどこでもやってるよ」というのがありました。まぁその通りですね。付けて売れるなら付けます。

アパレルとて素人集団ではありませんので、店頭の情報や市場の分析はかなり細かくやります。ポケットなどめちゃくちゃわかりやすい要素の場合、すぐに行動に移せます。

世間一般の声も大事ですが、商売は顧客の声がやはり大事だと思います。顧客がどのような嗜好なのか、さらに見込み客も想定しながらデザインも考えなければなりません。

世間の声を無視しろというのではないのですが、お客様の意見を吸い上げないといけないのですよ。

人の意見を素直に聞くのも大事ですが、逆に自分の立ち位置を確認し一部の意見に流されない、惑わされないよう自分達にとっての事実を確認するのも大事ですよね。

 

そういうことでまた😌