kaizeの部屋

ツイッターからはみ出た日記

こだわりの話

「この服のこだわりってありますか?」

服を作ってる人は誰しも聞かれてたことのある質問だと思います。

俺もよく聞かれます。ちなみによく聞かれるベスト3は

  • コンセプトってなんですか?
  • 年齢層はどのくらいですか?
  • おすすめはありますか?

の3点です。

ほんと以前はね「コンセプトってなんですか?」ってよく聞かれてたんですよ。

最近は無くなりました。なぜなら”わかりやい服”を意識しだしたからです。

前は、わかる人にわかればいいや的な考えだったんですけど、これが厄介で、「わかる人にはわかる服」と「実は全然伝わらない服」というのは紙一重?いや根本的にプロダクトとしての完成度が違うんですよ(多分)

ちょっと穿った見方をすれば、「伝わらない服」を「わかる人にはわかる」と都合よく置き換えてしまうのはよくないと気づいてしまったからです。

年齢層も同じで、誰が着るのかわからないから聞かれるわけで、ぶっちゃけ何をしたいのかがちゃんと伝われば年齢は聞かれません(そもそもターゲット年齢自体がもはやナンセンスなのは多分聞く人も薄々気づいてる質問なので)

 

ということで個人的には”わかる人にはわかる”服は”誰にでも(なんとなく)わかる”と思いますし、”わかる人”に響く服というのは”わかりやすい服”だという結論に至っています。

なんか、意味分かりにくいですね。前にも書きましたが、世界的に有名なブランドであっても、いや有名なブランドだからこそ”誰でもわかる服”を作っていることが多く、見た目やそこから醸し出す力、人に理解させる力というのは大きいと思います。少なくとも、「こういうことを表現しているんだな」という波動(笑)を感じさせる服というのは良い服だと俺は思ってます。

今は「このブランドのコンセプトはなんですか?」って聞かれた「失敗したな」と思っちゃいます。

 

けどさぁ、難しいんですよね。一目でわかる服というのは、気を抜くとめちゃくちゃダサい服になる可能性を秘めてる。分かりやすすぎて陳腐。みたいな。自分が表現したいことが明確かつ時代性を鑑み、これをみて人がどう思うかって考えながら作る…なんだか小難しいですね。

 

昔話になりますが、俺は男ですが女性物の服を作りにあたり、例えば「テーラードは本セッパだよ!譲れない」とか「ズボンはちゃんとマーベルト仕様じゃないと」とか色々言ってたんですが、「それ、ウチのお客様の為なの?」って散々言われまして、まぁ、それでもこだわりと思ってやってたんですが、ずっとやってるうちに、こだわるべきは綺麗に見えるとか、コーディネートしやすいとか顔うつりがよく見えるとか、そういう部分に変化していった経験があります。

もちろん、顧客がどういう嗜好なのかってことが前提なのですが、個人的には思いやりのある服にこだわっているという部分が大きくなりました。

思いやりと言ってもただ着やすいというわけではなく、求められているデザインと提案するデザインのバランスをとるということが結果的に思いやりのある商品構成であるべきだという感じです。(あとあからさまにどこかのコピーではないということも、思いやりのあるデザインだと思います。お客様を失望させたくないですしね)

 

ただ、お客様に明確に分かりやすいこだわりだけでもいけないかなとも思います。例えば生地に関しては重さや硬さ、仕様面では物性が悪いとか着にくいとか、この仕様、生地では無駄に価格が高いとか、プロじゃないとわからない部分があって、そういうのはデザイン性とトレードオフみたいに言われることもありますが、そこは妥協ではなく、吟味するということが大事なのかなと。その吟味に関してこだわるというのがプロとしての仕事かなと最近は思っております。着たら良さがわかる服を作るというのもプロの仕事かなぁなんて。なんかそれらしいことを言ってますが、できてるかどうかは謎です。

 

メンズとウィメンズ、こだわるところは結構違うと思っていて、メンズはシルエットに変化が少ない分、素材やディテールが持つバックグラウンドみたいなもの、どちらかというとプロセスにこだわる部分も多いかと思います。ウィメンズの場合はブランドにもよりますが、美しくみえるシルエットや素材の色やテクスチャーの変化、デザインの大胆さ、今っぽさ、つまり結果的に出来上がった服を着たらどうなるのかが重要視されると思いますので、あまり糸番手がどうとか織機がどうとかのプロセスのアピールよりも、着たら可愛く見える、体が綺麗に見えるという結果が大事なのかなと思います。

 

俺はウィメンズだから結果的にこのような思考になったといえばそれまでですが、今は価値観も多様化してますので、女性の方でもバックグラウンドやプロセスにこだわり価値を感じる方もいらっしゃいますので、その時はその時できちんと説明すれば良いかと思います。(当然ですが、バッググラウンドやプロセスが全く無い服はありませんので)

何を言いたいのかというと、何をこだわりと表現するのかって話なんですけどね…

 

服を作るときのこだわりは根幹の部分は変わらずとも、時代や顧客に合わせて変化していくと思います。ずっと同じところにこだわる人もいますが、考え方や手法は変わっていくと思いますし、変わった方がいいようにも思います。ともかく、こだわりとわがままは紙一重。その差はあまりいい表現ではないですが、売れているか売れていないかです。身も蓋もないですが。

現状、そのこだわりがどのようにお客様に伝わっているのか、そのこだわりは時代性があるのか、本当にお客様が求めているのはそこなのか。もしくはお客様の世代が変わってそのこだわりはちゃんと通じているのか。裸の王様にならないよう、客観視できるようになりたいですね。

 

それでは😌